授業の最後に「今日の勉強、わかった人?」と聞く。たくさんの手が挙がると、なんとなく安心しますよね。ところが、次の日に似た問題を出すと、手が止まってしまう子がいる。昨日は分かったはずなのに、どうして?
実は、「説明を聞いて分かった」と「自分一人でできる」の間には、少し距離があります。授業中にうなずいていても、自分で問題を解けるとは限りません。
そこで考えたいのが、授業の最後に、全員が一人で取り組む問題を1問だけ用意することです。
今回は、小学校4年生の算数「面積」を例に、問題の作り方、3分間の進め方、子どもの答えに応じた次の手立てまで具体的に整理します。
「わかった人?」で見えていないもの
「わかった人?」という問いかけ自体が悪いわけではありません。ただ、手を挙げるかどうかには、いろいろな理由があります。自信がなくて挙げない子もいれば、周りにつられて挙げる子もいるでしょう。
そして何より、教師の説明を聞いて理解したつもりでも、自分一人で使えるかどうかは別です。だからこそ、授業の最後に一度、教師の説明や友達の助けから離れて、自分の力で考える時間をつくります。
ここで大切なのは、問題をたくさん出すことではありません。「今日の授業で、何ができるようになったか」を確かめられる一問にすること。 たった1問でも、何を問うかで見えるものは変わります。
4年生「面積」で、こんな一問を出してみる
例えば、4年生の算数で長方形の面積の公式を学んだ授業。最後に、こんな問題を用意します。
今日のラスト問題
たて4cm、横6cmの長方形があります。
① 面積を求める式と答えを書きましょう。
② どうしてその式で面積を求められるのか、説明しましょう。
※言葉でも図でもOKです。
答えは24cm²。でも、そこで終わらない
①の答えは、4×6=24、24cm²です。ここまでは比較的シンプルな計算問題です。
では、②はどうでしょう。「公式だから」「たて×横だから」と答える子がいても不思議ではありません。公式を覚えていることは分かりますが、なぜかけ算で求められるのかまでは、まだ確かめきれていません。
例えば、「1cm²の正方形が、横に6個ずつ、4列並んでいるから」と説明できれば、面積と式の関係を捉えている可能性が高まります。言葉でうまく説明できなくても、マス目を描いて示せれば十分です。
説明の上手さを競うのではなく、考え方が見えているかを確かめたいのです。
最後の3分、実際にどう進める?
「一問出すのはいいけれど、時間が足りなくならない?」そんな心配もあります。そこで、授業の終わり3分を、あらかじめ次のように設計しておきます。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 最初の20秒 | 問題を提示する |
| 次の80秒 | 全員が一人で考える |
| 次の50秒 | 解答例を示して確かめる |
| 最後の30秒 | 教師が回答の状況を把握する |
これはあくまで簡易モデルです。理由を書く時間が足りなければ、5分程度に延ばしたり、解答の確認を次時に回したりしても構いません。
教師の声かけは、これだけでいい
「最後に一問。今日の勉強を、自分一人でも使えるか試してみよう」
「理由は、言葉でも図でもいいよ」
「間違えても大丈夫。次に何を練習すればいいか、先生も考えたいからね」
ここで全員に発表を求める必要はありません。ノートに書いても、ミニカードを使ってもOKです。
ただし、短い時間ですべての記述を細かく読み取るのは難しいものです。授業中は大まかな傾向をつかみ、詳しい確認は授業後や次の時間に回すことも想定しておきます。
子どもの答えを見たら、次に何をする?
ここが、今回いちばん大切にしたい部分です。確認問題を出して、丸をつけて終わり。それだけでは、もったいないと思います。
間違いを、次の授業のヒントに変える。
例えば、先ほどの面積の問題なら、次のような対応が考えられます。
※以下は、実際の児童の回答ではなく、架空の回答例です。
パターン① 答えも理由も説明できた
「4×6=24。1cm²が6個ずつ、4列あるから」
計算も、その意味も捉えられていると考えられます。こんな子には、少し形を変えた問題がよさそうです。例えば「同じ面積になる別の長方形を考えよう」。ただ計算量を増やすのではなく、学んだ考え方を使う課題に進みます。
パターン② 正解しているけれど、説明できない
「答えは24。でも、理由は……?」
公式は覚えていても、意味を理解しているかは未確認です。そんなときは、1cm²のマス目が並んだ長方形を見せます。
「この一列には、何個ある?」「同じ列が、いくつある?」
図と式をつなぐことで、なぜかけ算を使うのかを考えられます。
パターン③ 「4+6=10」と書いた
これは、単純に計算が苦手という話ではないかもしれません。長さと面積が混同されている可能性もあります。
そこで「4cmと6cmは、どこの長さかな?」と確認してみます。そのうえで、1cm²のマス目を実際に数える。公式をもう一度暗記させる前に、何を求めているのかを確かめる方がよい場合があります。
パターン④ 何も書けなかった
白紙だからといって、面積が分かっていないとは限りません。問題文を読むのに時間がかかったのかもしれないし、書き始めるきっかけがつかめなかったのかもしれません。
まずは「どこで困った?」と短く聞く。必要なら、一緒に最初の一列だけ数えます。
一つの答えだけで理解を決めつけず、子どもの考えを確認してから支援を選ぶことが大切です。
翌日の授業が、少し変わる
例えば、確認問題を見たら、式は正しく書ける子が多いのに、理由を説明できない子も複数いたとします。そんなとき、翌日の授業の始めに、短いマス目の問題を入れることが考えられます。
一方で、困っていた子が少数なら、全体の学習を進めながら個別に確かめる方法もあります。つまり、授業最後の一問は、その時間だけで完結しません。
最後の3分が、次の授業の最初の3分を決める。
このつながりをつくれることが、大きな価値だと思います。
もちろん、毎時間すべての子の理解を一問だけで正確に判断できるわけではありません。授業中の様子、ノート、単元を通した学習状況などと合わせて考える必要があります。
準備を増やさない「一問セット」の作り方
とはいえ、毎時間きれいなプリントを作っていたら、それだけで大仕事です。そこで、授業準備の段階で三つだけ決めておく方法を考えました。
授業準備の3点セット
- 今日、子どもに何ができるようになってほしい?
- それを確かめるには、どんな一問を出せばいい?
- つまずいていたら、次にどうする?
例えば「面積」なら、次のようになります。
目標: 長方形の面積の求め方と、その意味を理解する。
確認: 4×6の式と答え、式の意味を説明する。
支援: 説明が難しければ、1cm²のマス目に戻る。
これだけでも、授業中に何を見るかがかなり明確になります。問題は黒板に書いても、教科書から選んでも構いません。
特別な教材を追加することよりも、毎回無理なく続けられることを優先したいところです。
まとめ|「わかった?」を「できた!」につなげる
授業の最後に、子どもたちが「わかった」と答えてくれる。それはうれしいことです。でも、教師が本当に知りたいのは、その先ではないでしょうか。
自分一人でできるようになったか。どこで困っているのか。次に何を支援すればよいのか。
授業の最後の一問は、子どもを評価して終わるためではなく、明日の授業を少しよくするための一問です。
まずは一つの授業から。「今日、最後に何を確かめよう?」その問いを授業準備に加えてみたいと思います。
参考資料
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編』
- 国立教育政策研究所『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校算数』
